#38 井上彪(プロボクサー)

お~い!元気しちょる?

24年10月2日(水) 20:00

井上彪さん(宮崎県出身)

 

 

大阪市にある、六島ジム。数多くのプロボクサーを輩出している、名門です。

ここに、宮崎から世界へ羽ばたこうと奮闘するプロボクサーがいます。

 

今回の主人公、井上彪(いのうえ・たける)さんです。

 

 

一度は諦めた”世界王者”の座。その夢を追いかけ続け、日々トレーニングに励む彼の姿を追いました。

 

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宮崎市にある格闘技ジム「神武會」。

ここに、井上選手と縁のある方がいます。

 

道場長の青木太さん。主人公との関係は―――?

 

(青木さん)

「タケちゃん(井上選手)が小学校低学年から空手をしていたんですけど、その時から教えていて。今でも帰ってくるたびにここで一緒に練習をするような仲です。」

 

(井上さん)

「小さい頃から気にかけていただいてて。ごはんを食べに連れて行っていただいたりとか。そういう関係をずっと現在まで続けさせていただいている感じです。」

 

幼少期から空手道場に通い、格闘技の道へ進んだ井上さん。

小学校の時に、道場で”ある出会い”がありました。

 

(青木さん)

「道場に田野先生という、ボクシングで有名な先生がいらっしゃって。田野先生に会えたのが(彼の)ターニングポイントになってると思います。」

 

(井上さん)

「そのまま田野先生に教えをこう形になって、ボクシングを始めました。」

 

井上さんは小学校を卒業後、ボクシングの強豪校である日章学園へ進学。

高校1年生の時には、全国高校選抜フライ級で優勝。そして―――

 

(井上さん)

「翌年、高校2年生のインターハイで優勝して、そこからは3位以内の入賞はしているんですけど、チャンピョンはとれていないですね。」

 

現在プロボクサー3年目で、日本ライトフライ級4位の井上さん。

六島ジムトレーナーの武市さんの指導のもと、日々トレーニングに励んでいます。

 

(武市さん)

「普通のボクサーにはないタイミングで打つんですよね。踏み込みが早いしバックステップが早いから、そういう基本的な能力が高いですね。」

 

持ち前のセンスを活かし、世界王者を目指していましたが、

実は一度、ボクシングから離れていた時期がありました。

 

(井上さん)

「大学卒業を機に働かないといけないっていうのもありまして。

 警察官を志して合格をいただいていたので、そのまま警察官として働かせてもらっていました。」

 

ボクシングで近畿大学へ進学した井上さん。

アマチュアの戦績は53勝13敗でしたが、ここでボクシングから離れ、卒業後は大阪府警に入りました。

 

 

(井上さん)

「自分のための就職ではあったんですけど、やっぱりお世話になってる両親が”いいところに就職したな”と思ってくれたらそれはそれで嬉しいなという気持ちもあって、働かせていただいていました。」

 

(青木さん)

「(警察官は)良い職業だということで、良かったねーと言っていたんですけど・・・」

 

警察官として勤務し、しばらくたった頃、メディアで目にするボクシングの試合を見るたびに、気持ちが揺らいでいました。

 

(井上さん)

「警察学校を出た時、ボクシングをしている人を見て”羨ましい”って思ったのが一番の答えかなと。”羨ましいから、僕もやりたい”(と思いました)。」

 

(青木さん)

「本人が来て、『プロボクサーになりたいから悩んでいます』『コーチから”もう世界とれるぞ、お前やったら”と(言われた』と相談を受けた)。」

 

その声をかけたコーチが、六島ジムのトレーナー・武市さんでした。

 

(武市さん)

「(井上さんが)堅い仕事に就いていたので、(声掛けは)ちょっと迷うところも自分自身にあったけど、彼の未来を考えたときに”どっちが後悔しないかな”と色々考えた結果、プロに誘いました。」

 

2022年6月末で大阪府警を退職し、同年10月にプロボクサーデビューとしてデビューを飾りました。

 

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取材当日、井上さんは大阪府中央卸売市場にいました。

 

主に青果物を扱う、みくりや青果。

ここが、井上さんの現在の職場です。

 

 

(井上さん)

「(警察官とは)全然違った方向性の仕事ですけど、普段なにげなく見てるスーパーの野菜の裏側を作れるっていうのはとても新鮮な機会だと思います。」

「勤務時間とかも色々融通をきかせてもらっているので、プロボクサーとして活動する上では働きやすい職場だなと思います。」

 

(みくりや青果・細田社長)

「(井上さんは)本当にまじめで。まず返事も良いですし、本当に助かっています。」

「遠征とか最優先で、頑張ってこいっていう気持ちでみんないてます。」

 

井上選手の試合にはかかさず応援に行くという細田社長。

 

(みくりや青果・細田社長)

「必勝を願って横断幕をつくらせてもらって、リングから目立つところに掲げさせてもらっています。」

 

そんな社長のはからいもあり、今はボクシングに専念できる最適の環境なんだそう。

 

プロデビューしてから4戦目まで無敗と、順調に勝ち進んできた井上選手に、

今年4月、大きな試合が舞い込んできました。

 

 

”WBOアジアパシフィック ライトフライ級タイトルマッチ”

 

5戦目という異例のスピードで、アジアタイトル戦を迎えました。

 

(井上さん)

「めちゃくちゃ早くチャンスを作っていただいたなという気持ちと、ここで勝てば世界の道が広がるっていうような試合だったので・・・」

 

相手はこの階級の王者、ジェイソン・バイソン選手。

 

(井上さん)

「1ラウンド目に、すごいパンチを効かされてしまって。

 プロボクシングに入ってから試合でパンチを効かされたのが今回初めてでした。」

 

1ラウンド目から相手優勢で試合が進みましたが、10ラウンドまで粘り、判定へ・・・

 

―――

 

プロで初の黒星となったタイトル戦。今回の試合でみえた課題は―――。

 

(井上さん)

「前回の問題点であったディフェンスであったりとか、プロボクサーとして効かせるパンチの仕方であったりとか、そういったところに焦点を当てて練習をし直しているような感じです。」

 

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休日、井上さんの家に案内してもらいました。

住んでいる部屋は、ジムが用意してくれた寮。

仕事や練習のない日は身体を休め、ゆっくりと過ごすことが多いんだそう。

 

(井上さん)

「警察官をしていた時は交番勤務をしてましたので、生活リズムは結構不規則だったのかなと思います。今は、生活リズムはちゃんとしたものになっているかなと思います。」

 

この日、近くに住む井上さんのお兄さんとの食事に同行させてもらいました。

 

向かった先は、意外にもラーメン屋でした。

 

(井上さん)

「減量がないシーズンだけですけど、ラーメンも食べます。」

 

お兄さんに、彪さんがプロになったことについて聞いてみると―――

 

(兄・颯さん)

「練習は多分しんどいんだと思いますけど、しんどいながらも充実してそうなのでプロになって良かったんじゃないかと思います。」

 

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(井上さん)

「何をするにしろ、努力というのは絶対に必要なことになってくると思うので、今回の負けにへこたれず、しっかりまた地道に努力をして、最終的にはやっぱり世界チャンピオンっていうのが目標ですけれど。しっかり段階を踏んでやっていければと思います。」

 

 

夢を追い続ける、元警察官ボクサーの挑戦は、これからも続きます―――。