#54 萩原天晴(漫画原作者)
26年2月4日(水) 20:00
萩原天晴さん(宮崎市出身)
「早ければ1日、2日で終わっちゃうこともあります。
でも、難航すると1週間とか下手するとかかっちゃうときもありますけど」
東京都内某所。原稿用紙と向き合うのは、今回の主人公、萩原天晴(てんせい)さん。職業、漫画原作者。

(萩原さん)
「これ面白いの書けそうと思って、こう書いていくじゃないですか。
ただ、途中まで結構書いてたところで、”あれ?これ駄目だ”ってなることもあって、
それを全部ボツにしてまた1からみたいなこともあります。別の話を考えるみたいな。」
書いているのは、現在ヤングマガジンで連載中の萩原さんの代表作『1日外出録ハンチョウ』。
萩原さんは原作担当として、ストーリーや大まかなコマ割り・セリフの書かれた”漫画の設計図”である”ネーム”を制作。

この萩原さんの”ネーム”が作画担当の2人に送られ、出版されることになります。
1日外出録ハンチョウは大人気漫画カイジのスピンオフ作品。
カイジでは敵キャラだった『ハンチョウ』こと大槻が主人公となり、24時間という限られた時間の中で、
グルメ・旅行・サウナといった究極の休日ライフハックを楽しむ様子が描かれた漫画です。
取材D) 作風と萩原さんの見た目がちょっとギャップがありますね
萩原さん)どんなイメージでした?
取材D) もうちょっとおじさんだと思ってました
萩原さん)おじさん漫画ですからね。いやでもそれはよく言われますね、会う人に。
(萩原さん)
「本当はメディアで顔とか出したくなくて。
それは何か、自分の漫画に書いている人のイメージをあまり持たれたくないというか、
持ち込まれたくないっていうのがあったんですけど。
宮崎地元なので地元(のテレビ)なら、ちょっと両親も喜ぶかなと思い(取材を受けました)。」
萩原さんは子供の頃から漫画は好きだったものの、今の仕事に就くとは思っていませんでした。
(萩原さん)
「スポーツばっかしてたんすけど、高3の、進路を決めなきゃなっていうときに、
なんかこのまま勉強して大学行って就職してっていうのがなんかこう、本当にそっちなのかなっていうのが
漠然とあって。そんなときに友達の家に行ってGANTZっていう漫画を読んで。もうめちゃくちゃ面白くて、
なんかすげえなと思って、その場で友達に”俺漫画家になるわ~”って言ったら、”おう!”みたいな。
そのまま家に帰って、親にも”ちょっと俺漫画家を目指してみようと思う”(と伝えた)。」

そんな萩原さんの唐突な決意表明を聞いたのが、宮崎在住の親友、広瀬亨樹さんです。
(親友・広瀬さん)
「”広瀬、俺、漫画家になるわ。”って、急にぽつっとつぶやいて。
僕としては”おう~”ってちょっとびっくりして、あっけに取られたんですが、
その後、急に美術部に入って絵を描き始めて、美大受験するわって言って美大を受験して、
京都の美大に合格して、そのまま漫画の道に進んでいったっていう。」
今でも定期的に宮崎に帰省している萩原さん。
連載中の『ハンチョウ』には宮崎ネタが度々登場します。
例えば、主人公ハンチョウの側近、宮崎出身の沼川と食事するシーンでは、
ハンチョウ)沼川、出身は?
沼川) 九州の宮崎ですが
ハンチョウ)なるほど。お前が食べたいものはズバリ・・・チキン南蛮!
…なんて場面や、さらには宮崎出身者同士で方言を話す場面も。
「てげうめえ」「ごつ」や、イントネーションを巧みに表現するなど、宮崎弁満載。
他にも登場する店名が、宮崎ゆかりのものであったりと、宮崎人ならニヤリとする場面もたくさん登場します。
これに対してネットでは...「ハンチョウの宮崎ネタはガチすぎる!」といった反応も。
これ宮崎の人しかわからんやろみたいな。何書いてんのみたいな感じとかでしたけど。ギャゼットとか。
東京の人はなんだろう?って、宮崎の人以外分かんないだろうなみたいに思いながら書いたりとか。
大学時代、講談社の漫画賞を受賞したことで、本格的に漫画の世界に飛び込んだ萩原さんですが、
その漫画人生は順風満帆ではなかったといいます。
(萩原さん)
「本当に1年2年何も書けない時期とかありました。牛丼屋の深夜バイトで牛丼作って、
四畳半の自分の部屋に帰って寝るみたいな日々をしてた時期もあります。その時期は本当つらかったですね。」
取材D) その当時の経験とかも漫画に書いてますよね?
萩原さん)書いてます。
(萩原さん)
「当時めちゃくちゃつらかったんですけど、今思うとその時期があったおかげで書けることとか、
今の自分があるんで、よかったなというか、何があるかわかんないなとは思いますね」
日常の些細な出来事をアイディアにする萩原さんの漫画。編集者と話しながらストーリーを固めていきます。
(萩原さん)
「今日は連載中の『1日外出録ハンチョウ』っていう漫画の次の話の打ち合わせですね。」
~打ち合わせ中~
萩原さん)前回、森くんと話したやつなんですけど、書いてみたんですけど、なんかちょっと弱いなと思ってあれが。
地下での就労期が終わって、もうあと1週間ぐらいで出るというときのそのおっさんの話っていうか
っていうのが、ちょっと良さそうかなと思っててなんだろう民主主義になった弊害の
自由のせいで苦しんでる現代人みたいなものの共感が得られたらいいなみたいな。

(ヤングマガジン編集部・濱中さん)
「こういう出来事があったとか、昔こういうことをやってたっていう。
その物事に対して、自分どう思ったのかみたいな、その感情をしっかり客観視というか、それがすごいできてる人。」
(ヤングマガジン編集部・森さん)
「その日常を読者の皆さんにすごい共感してもらえる形で切り取るのがすごい上手だなっていうふうに思っていて。
主人公もやっぱおじさんたちですけど、女性とか子供とかでも共感できることがいっぱい入ってるというか。」
萩原さんの連載デビューは2014年、その最初の連載が終了した頃 飛び込んできたのが、
大人気漫画『カイジ』のスピンオフ作品『中間管理録トネガワ』の話でした。
(萩原さん)
「担当に就いてくれてた方がその企画を”ちょっとあるんだけどどう?”って声をかけてくれて
ちょっと書いてみますということで書いたら”OKいけます”ってことで始まったって感じです。」
「結構トントン拍子にババっと決まって、もう5月に一番上に乗りますみたいな
なんか”え?もうそうなんですか”みたいな。”わかりました”みたいな。全く実感がないまま始まった感じでしたね。」
『トネガワ』は発表されると瞬く間に評判となり、
2017年には「このマンガがすごい!2017」のオトコ編で1位に選ばれます。
さらに、『カイジ』スピンオフとして『ハンチョウ』『イチジョウ』の連載も開始。
特に『ハンチョウ』はスピンオフ作品としては異例の20巻を突破。
有名人にもファンが多く、企業コラボも行うなど、スピンオフという枠にとどまらない人気漫画となりました。
その活躍に、親友の広瀬さんは―――。
(親友・広瀬さん)
「最初は信じられなかったですね。これ本当に萩原くんの作品なのかなと思ってずっと見てたんですが。
作品の中でも結構宮崎のことが登場するシーンが多いので、
やっぱり今でも宮崎を忘れてないんだなという思いはしますね。」
―――
『カイジ』原作者である福本伸行先生に憧れていたという萩原さん。
憧れ先生のスピンオフ作品を担当することについて、萩原さんの想いを聞きました。
(萩原さん)
「僕の父が家に(持っていた)『銀と金』っていう福本先生の漫画があって、それをもう小学生の頃から読んでて
難しくてわかんない部分もほとんどなんだけど、そのキャラクターとかの立ち具合とか、
もうセリフのうまさとかで十分面白いっていう。」
『金と銀』は、福本伸行作品の中でもファンが非常に多く、裏社会を舞台にしたサスペンス漫画です。
(萩原さん)
「(福本先生に)会うと、すごい褒めてくださったりとかもして、もう本当ありがたいなと。
僕にとってはもう神様みたいな存在なので、福本先生は。
当時読んでた高校生の頃の自分に”君、トネガワが主人公の漫画書いてるよ”とか言っても
多分信じてくれないだろうなとは思います。」
『ハンチョウ』などの『カイジ』スピンオフシリーズは、
福本先生は協力という形で、内容は萩原さんに任せられているんだそう。
(萩原さん)
「任せると言っていただいて。
それは本当にめちゃくちゃありがたいことだし、なので下手な漫画は書けないなとは思ってますね。」
”おーい!元気しちょる?”
学生時代、一緒に漫画を読んでいた親友・広瀬さんから、霧島焼酎の贈り物。
(萩原さん)
「うちの父が(霧島焼酎が)大好きなので、今度東京来たときに一緒に飲もうかと思います!」
広瀬さんからのビデオメッセージに少し照れくさそうな萩原さん。
ふとしたことで志した漫画道。
取材D) 漫画家になるってやっぱ難しいですよね。
萩原さん)難しいと思います。僕はもう完全に運が良かったなと思います。タイミングとか巡り合わせとか。
でもやってないと多分そのチャンスもなかったんだろうなみたいなのがあるんで。
諦めるタイミングが何回もあったんで、諦めないで良かったなって感じですかね。

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